【味と栄養、手軽にアップ】

自宅で干し野菜

野菜を干せば甘くなる━━I。レシピ本で読んではいたが、試したことはなかった。でも家で料理をする時間が増えた今、作ってみたくなった。干すのは「ひと手間」と思っていたが、むしろ逆。下ごしらえがいらず、火の通りも早いため、調理時間が短くなった。これははまりそうだ。

晴れの日には、干し野菜を作るのが日課という東京・築地の料理道具屋3代目の廣田有希さん。「秋冬は空気が乾燥するので、野菜を干すのに最適な季節。甘みやうまみが増して苦みが和らぎ、子どもに人気がないピーマンも食べやすくなる」と教えてくれた。

東京農業大の谷口亜樹子教授(食品機能科学)によると「こうした味の変化は、水分の減少と酵素の働きによるもの」だという。生野菜は約90%が水分だが、干すことで数%〜30%に減少し、甘みやうまみが濃縮。また、野菜に含まれる酵素の働きで、苦みが分解されるなどして味や食感が変わるという。葉や皮など、普段は捨ててしまう部分も干すことにより風味が変わり、使いやすい食材になる。

栄養面でもメリットがある。管理栄養士の金子あきこさんによると、干すことで野菜の体積が減るため、生野菜に比べて少ない量で食物繊維やミネラルを摂取できる。「熱や光に弱いビタミンCやビタミンAなど、分解されてしまうものもあるけれど、シイタケなどでは骨や筋肉の維持に必要なビタミンDが作られます」

干し野菜の作り方は簡単だ。野菜を洗って好みの大きさに切ったら、しっかり水気を拭き取る。あとはネットやざるに置くか、洗濯ばさみではさむなどして外に干すだけ。猫や鳥、虫が気になる場合は、網で覆われた干しかごがおすすめ。

廣田さんによると、日当たりが悪くても、風通しが良ければ問題ないという。できれば干している途中で表と裏をひっくり返し、夜間は露が降りてガビの原因になるため屋内の湿気が少ない場所にとりこむ。1日で足りなければ、翌朝また外に干す。

水分が全てなくなって完全に乾燥した干し野菜もいいが、廣田さんのおすすめは「手でさわってくにゃっと曲がる程度」の「半干し野菜」だ。ダイコンの場合、1、2aの輪切りで半日〜2日、1a角の拍子木切りでは数時間〜2日で半干しになる。

保存できる期間は、半干し野菜なら保存袋に入れて冷蔵庫で5日ほど。冷凍もできる。完全に乾燥したものは、乾燥剤とともに瓶に入れ、常温でも長期保存が可能。忙しい日もスープやみそ汁、インスタント麺に添えれば手軽に野菜が食べられる。

記者もさっそくダイコンやニンジン、カボチャなどを干してみた。皮を向かなくていいので準備は数分で終わり、干しかごにいれて1日、外に出した。

調理も手軽だ。ダイコンとニンジンは油をひいたフライパンで焼くだけで、香ばしい香りがしてきた。水分が少ないためか、きれいな焦げ目がつき、食欲をそそる。皮も全く気にならずにおいしく食べられた。

カボチャは煮物にした。廣田さんのアドバイスで砂糖を使わなかったが、十分な甘さに驚いた。廣田さんは「干し野菜は味が染みこみやすく、火の通りもいい。素材の味が強まるので、薄い味付けでも満足できてヘルシーです」と話す。

向かない野菜はあるのか。「スプラウトや三つ葉などの細い野菜は不向きだが、ほかは時間を調整すれぱだいたい大丈夫」と廣田さん。キャベツや白菜など葉野菜も、6〜8等分にし、芯ごと干せば甘みが増しておすすめだという。(藤波優)



(出典:朝日新聞、2020/12/05)

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