【「水の力」で気持ちよく運動】

水泳に挑戦

コロナ禍の運動不足を解消したい。でも、これから寒くなる季節、外で体を動かすのもためらいがち……。温かい室内とプールで、効率よく運動できる水泳に挑戦してはいかが。

「泳ぐ前にまず、水の「四つの特性」を頭に入れてほしい」と中央大水泳部監督の高橋雄介・理工学部教授は話す。

一つ目は「浮力」。水中では頭までつかれば、体重50`の人には45`分の浮力が作用し、残る重さは5`の計算になる。ひざや腰に不安を抱える人でも、体を楽に動かすことができる。

二つ目は「水圧」だ。水深1bでは、体の表面積1平方びあたり約1dの圧力を受けることになる。その状態で動くと、水が体に圧力を加える効果と、筋肉が収縮して血管の血液を上べ押し上げる効果で、心臓へ戻る血液の量が増える。さらに、心臓が1回の拍動で体に送り出す血液の量も増え、心臓の負担も減るという。

三つ目が「抵抗」。水は空気の約800倍の密度があり、同じ姿勢と速さで水中を動けば、陸上での運動に比べて800倍の抵抗を受ける。高橋さんは「水の中での運動量は非常に高くなる」と説明する。

四つ目は「水温」。プールの水温は30度前後に保たれている。人間の体は、体温より低温の水につかると、体温を下げないように代謝を活発にして熱を生み出す。「極端なことを言えば、プールに入るだけで運動と同じような効果が得られる」

ではこれらの特性を頭に入れて、実際にどんな運動をすればいいのか。

50歳以上を対象に「健康水泳教室」を開く「コナミスポーツクラブ中野富士見町」(東京)のインストラクター、荒武一寿さん(53)は「準備運動に時間をかけたうえで、水に慣れるため、水中ウォーキングから始めることをお勧めしたい。急に心拍数が上がって体調不良にならないよう、いきなり泳ぐことは避けてほしい」と言う。

まず、25bプールならば普通に歩いて1往復。次に横歩き、さらに体をひねりながら前向きに歩いて、それぞれ1往復をこなす。また、両手を体の前で交差させたり広げたりしながら、腰を落として股関節を曲げて横歩きをする。足を腰の高さほどまで蹴り上げたり、腕だけクロールのように水をかいだりしながら歩くのも効果的だ。

ウォーキングに慣れたら、実際に泳いでみる。トライしやすいのは、ビート板を使ったバタ足。板の後方をつかんで腕を伸ばし、顔を水につけると腰が浮きやすい。板の前側をつかんでしまうと、ひじが乘って足が沈みやすくなる。頭を上げるのも、腰が落ちて泳ぎにくい。

砂時計のように真ん中がくぽんだ「プルブイ」という浮き具も便利だ。足で挟んで泳ぐと、クロールなどが楽になる。最後はもう一度、ウォーキングを数往復してクールダウンする。

「休みながらでも最初は30分続けることを目安にしてほしい」と荒武さん。無理に長く入る必要はない。「プールを気持ちいいと感じることが第一歩。週1回からスタートし、週2回できれば理想的」

人が集まるプールで新型コロナウイルスに感染する心配はないのか。日本スイミングクラブ協会によると、プールで使われている次亜塩素酸ナトリウムはウイルスを不活性化させることが、専門家の研究で分かっている。「水を介した感染リスクは極めて低いと考えられる」とする一方、更衣室でのリスクはある。大声での会話をやめ、マスクを着用し、あらかじめ水着を着て来 場するよう勧めている。(桑原紀彦)



(出典:朝日新聞、2020/11/14)

戻る