【「安定した涙」が目を守る】

ドライアイ

新型コロナウイルス感染症の拡大で、在宅ワークなどパソコンの画面を長時間見ようになった人も多いのでは。そこで心配になるのが目の不調。記者も目がしょぼしょぼして、気づくと手でこすってしまっている。これっていわゆるドライアイ? どんな対策が効果的か、専門家に聞いた。

「ドライアイは涙の安定性が低下する疾患です」と話すのは、東京歯科大市川総合病院の島崎潤・眼科部長。ドライアイは、単に涙の量が減って乾きやすくなるのではなく、目の表面に涙がとどまる「涙の安定性」が損なわれる病気なのだという。

涙は目の表面を覆うことで、たえず乾燥しないように守っている。涙をつくる機能が低下したり、目の表面にとどまりやすくするムチンという物質が少なくなったりすると「安定性」が低下する。すぐに失明につながるものではないが、生活の質や仕事の効率、心の健康にも関連する病気だ。

眼科医などがつくるドライアイ研究会が昨年5月に発行した「ドライアイ診断ガイドライン」によると、喫煙や長時間のパソコン作業などがリスク因子になるという。

調査によってばらつきはあるものの、症状がある人は多い。長野県小海町の40歳以上の住人約3千人を対象にした大規模な調査では、有病率は男性の12・5%、女性の21・6%と報告された。

診断では、自覚症状の有無に加え、目の表面に涙がない状態にどれくらいさらされているかを測る検査がある。島崎さんによると、エアコンや扇風機の風を感じる状態で10秒間目を開けられるかどうかが、眼科を受診するひとつの目安になるという。

では、予防にはどんな対策が必要か。それは、リスク要因を避けることにつきるという。特に@エアコンによる乾燥Aコンタクトレンズ装着B長時間のパソコン作業という「三つのコン」に注意が必要だそうだ。室内を加湿したり、パソコン画面を目の高さより低くしたりと、日頃のちょっとした対策でリスクを下げられる。

「特に、パソコン画面の凝視は要注意。目の筋肉が疲れるだけでなく、まはたきの減少につながる。できるだけ大きな画面を使ったり、画面が暗くなりすぎないようにしたりして、適切な環境を心がけてほしい」と島崎さんは話す。

もう一つ、意外に危険なのが「座りっぱなし」だという。因果関係が確かめられたわけではないが、ストレスはドライアイ発症の要因の一つだそうだ。同じ空間に長時間座ったままのパソコン作業で、知らず知らずに蓄積されたストレスが、症状の悪化に影響するという。「作業が一区切りついたら画面か。ら目を雕し、5分だけでも散歩するのが、目の健康にいいでしょう」

目薬などの使い方にも注意が必要だ。充血を抑えるなどの効果がある目薬は薬局などでも購入できるが、点眼の頻度が多いと、涙の安定性を保つムチンなど大事な成分が洗い流されてしまって逆効果。同じ理由で、洗眼液なども使いすぎは禁物だ。

眼科で処方される目薬には、水分を補うだけでなく、ムチンがつくられやすくするなど「内側」から効くものもある。症状がよくならなければ、自己免疫疾患など別の病気の可能性もあるので、眼科に相談が必要だ。

島崎さんによるとドライアイは、ここ数十年で定義や診断基準が明確になり、実はありふれたものだということがわかってきた病気だという。「高血圧などと同じで、完治するのではなく、管理する病気。うまくつきあっていくことが大切です」(野口憲太)



(出典:朝日新聞、2020/10/24)

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