【食物繊維の豊富さが魅力】

もち麦

食用の大麦には、米と同じように「うるち」と「もち」がある。粘りけのある「もち麦(もち性大麦)」はあまり一般的ではなかったが、5年ほど前から消費が急に増え始め、現在は3万4千ノ(2019年)ほどの需要がある。鍵は食物繊維だ。日本人の食物繊維摂取量は1日当たり15cを切っており、目標量(18〜64歳)の男21グラム以上、女性18c以上に届かない。野菜や海藻、穀物などから摂取できるが、大麦は食物繊維の量が玄米の3倍、精白米の 20倍もある。この食物繊維の主体はβグルカンと呼ばれ、もち麦の方が一般的なうるち麦より多い。食物繊維が豊富でプチプチした食感を持つことがテレビ番組などで紹介され、もち麦の人気が高まった。では、どんな健康機能が期待できるのだろうか。

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では、体格指数(BMI)24以上で腹囲が85a以上の男性と90a以上の女性の100人を半分に分け、一方にはβグルカン2・2cを含むもち麦ごはんを、もう一方にはβグルカンを含まない麦ごはんを毎日2食、食べてもらった。12週間後、どちらも内臓脂肪面積が減り、特に100平方a以上あった30人ずつでは、もち麦ごはん で大きく減っていた。「一定量のβグルカンを含むもち麦を食べ続ければ、内臓脂肪の多い人で減少効果が高いことを実証できた」と、農研機構次世代作物開発研究センターの柳澤貴司・麦研究領域長は話す。

この試験に協力した大妻女子大学の青江誠一郎教授(食物栄養学)によると、もち麦が食後血糖値の上昇を抑える効果も、日本人が対象の研究で確認されている。「βグルカンは水溶性で、水に溶けるとネバネバになる。大麦はでんぷんの周りにβグルカンがあるために、でんぷんの消化がゆっくりと進み、血糖値の上昇が抑制される」という。血中コレステロール濃度を下げる 効果も日本人の試験で確かめられた。

2015年から食品表示法で機能性表示食品が規定され、こんな大麦βグルカンの働きに関心が寄せられたことも需要を後押しした。もっとも当初の供給を支えたのは米国産もち麦。輸入にも関わってきた全国精麦工業協同組合連合会の馬木紳次・食糧部長は「健康への関心から需要が高まり、ここに来て輸入が大きく増えた」と語る。

これに対し、国内のもち麦生産は昨年で8580dと自給率25%程度。晨研機構の塔野岡卓司・大麦品種育成プロジェクトリーダーは「消費者の国産志向もあり、加工・販売に当たる精麦会社から国産を増やしてほしいという声を聞く」と話す。このため農研機構は加工適性やβグルカン含有量が高い品種を次々育成している。栃木県と長野県も新品種を発表した。「はねうまもち」「キラリモチ」「くすもち二条」などが現在の主な品種。「5年前は自給率1%もなかったのがここ数年で急激に伸び、まだ伸びる余地はありそうだ」という。

この状況に精麦大手「はくばく」の秋山真実・商品戦略部広報課チーフは「各地のスーパーに国産もち麦が出せるまで、生産体制がようやく整ってきた」と語る。初めての人でも扱いやすいスティック状の袋に入れた国産もち麦を今秋、全国の量販店で販売し始めた。米に1袋入れて炊けば、もち麦ごはんになる。「リゾットやチャーハンもおいしい。ごはんに入れず、サラダの トッピングにするのもおすすめ」だ。

他メーカーからは今年、もち麦を使った冷凍おにぎりやカップめんが発売された。すでにコンビニおにぎりやパン、菓子などにも利用されており、もち麦はもう身近な食材だ。(米山正寛)



(出典:朝日新聞、2020/10/17)

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