【心の不調、生活習慣から改善】

「プチうつ」を克服

引つ越し、進学、転勤……。舂は生活に変化が起きやすい季節でもある。しかも今年は新型コロナウイルスの感染が広がり、例年以上に不安な舂だ。気持ちが晴れない「プチうつ」状態に陥つていませんか?どう対処していけばいいのか。専門家と一緒に考えてみました。

「生活が変わると緊張感が続き、ストレスがかかりやすい」と話すのは、「心の病を治す 食事・運動・睡眠の整え方」(翔泳社)などの著書がある帝京大の功刀(くぬぎ)浩教授(精神神経科学)だ。

うつ病は最近、生活習慣との関連が注目されている。たとえば生活習慣病とかかわりが深い肥満。肥満の人はうつ病の発症リスクが1・5倍高くなるとの研究報告もある。偏った食事などでエネルギー過剰になり肥満になると、体内に慢性的な軽い炎症が起きる。これが脳のはたらきに悪影響を与える、と考えられている。

「定期的な運動や栄養バランスのとれた食生活。プチうつから抜け出すために、まずそこから始めたらどうでしょうか」

運動習慣のない人は? 「1日5分のウォーキングからで構いません。生活のなかで活動量をあげることが大切。家庭菜園での農作業やガーデニングなどはとてもいいと思います」と功刀さんは助言する。

うつ病の治療に栄養学の視点を採り入れる「栄養学的治療」も注目されている。たとえば、葉物野菜や納豆、レバーなどに多く含まれる葉酸。うつと密接にかかわる脳内の神経伝達物質の合成に影響するとされ、血液中の葉酸値が低いとうつ病のリスクを高めるとの報告が複数あるという。

キノコや魚に多いビタミンD、肉などの鉄、力キなどの亜鉛、海藻類のマグネシウム……。これらが不足すると、うつ病になりやすくなるとの報告もある。腸内細菌とうつとの関連も指摘されている。ヨーグル卜などの善玉菌と、その善玉菌のエサとなる食物繊維の摂取を心がけたい。

不眠はうつを招きやすい。スマホのブルーライトは体内時計のリズムを崩すので、寝る前はなるべく遠ざける。週末の「寝だめ」もリズムを崩す原因になる。できる限り起きる時間は一定にし、睡眠不足は昼休みに15分程度の昼寝で補う。

「うつうつとした気分が続いていたら、それは生活スタイルを再考するサインととらえてほしい」と功刀さんは話す。

ほかにできることはないだろうか。ストレス対策として注目されているものに「マインドフルネス」がある。

過去の失敗や先々の不安。そこにとらわれるとネガティブな考えに支配され、抜け出せなくなる。そこからいったん離れ、意識を「いまここにいる自分」に集中。ストレスを自覚し、‐コントロールする。

そんな心のあり方だが、抽象的でとらえにくい。国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)で、うつ病などからの復職をめざすリワークプログラムのひとつに採り入れられていると知り、私も参加させてもらった。

体験したのは「レーズンエクササイズ」。レーズンー粒をまずはじっくり観察。手で触ったり、匂いをかいでみたり。口にふくんで舌でころがし、形や眛を感じる。すぐにのみこまずに数分間。ゆっくりかんで、のみこみ、のどを通って胃に落ちていくまで。すべての感覚に意識を向ける。

「五感を尽くして『いま』に気付くトレーニング」と公認心理師の川原可奈さんは話す。やってみると、不思議と心が落ちつく気がした。

うつに悩む人は、まじめで責任感が強い人も多い。「一心不乱に頑張ってきた結果ともいえる。いまの心の状態に目を向ける時間を意識的にもつことも大切です」と川原さんは話す。(武田太)



(出典:朝日新聞、2020/04/18)

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