【揺れる炎でストレス解消】

たき火に癒やされる

まだまだ寒い毎日。家で引きこもってばかりでなく、あえて外に出て、たき火をしてみてはいかが。自然の中で炎をぼーっとみると、心が癒やされるはず。

東京都大田区の城南島海浜公園。羽田空港を望むキャンプ場で、たき火台を組み立てていたのは都内に住む歯科医師、吉田ふみさん(34)。キャンプで友人が楽しむ姿を見て始めた。「火おこしは手間がかかるけど、その不便さこそ楽しい」。コーヒー片手にゆらゆら揺れる炎を眺める時間が好きだという。

とはいえ、初心者には意外とハードルが高い。コツは何だろうか。

埼玉県三郷市にある火を専門に扱うアウトドアの店「iLbf」(イルビフ)の堀之内健一朗さん(43)は「小さい火から育てていくのが大切」と教えてくれた。まず薪の組み方。初心者向きなのが、井の字形に組む方法だ。

「火の通り道に薪を重ねると火柱も上がりやすい」。最初に火を付ける火口は、着火剤や松ぼっくりのほか、牛乳パックやポテトチップスでも代用できるという。

いざ着火すると、薪を動かしたり、次々と投入したりしがちだが、これはNG。「熱が下がり、炎も小さくなる。見守ることが大事です」。薪がメラメラと赤くなればおき火ができた証しだ。

薪には種類がある。スギやヒノキなどの針葉樹は軽く、着火しやすい。重い広葉樹は長持ちだ。サクラは甘い香り、クヌギやクリはパチパチと音が楽しめる。堀之内さんは「最初は道具をレンタルして始めるのでもいい。構えずにやってみて、火を懐かしんでほしい」と話している。

ところで、たき火には、どんな効果があるのだろうか。

大阪ガス行動観察研究所所長の松波晴人さん(53)は、ある実験をした。暖炉がある部屋とない部屋でそれぞれ、初対面の女子大生と主婦の15組に50分間、互いの家族について話してもらい、部屋の雰囲気や相手の印象をアンケートで調べた。

すると、暖炉の部屋は、リラックス度や癒やされ度を感じやすく、会話後に「相手は自分に似ている」と評価する傾向も強かった。「話が弾み、共通点が生まれて親近感を持つようになった証し」という。好意的なしぐさの「うなずき」の回数も3割ほど増え、会話が途切れる回数は減った。

川のせせらぎや、雲や波の動きには、集中力の回復などの癒やし効果があることは元々知られている。「火にも同じ効果があるのは間違いない。昔の家屋に囲炉裏があったように、火はコミュニケーションの場作りに欠かせない要素だ」

たき火をしたいが、道具も時間もない……。そんな人に便利な場所もある。大阪市大正区の「焚火屋火火」(たきびやびび)。現在は一時休業中だが、屋外に10台のたき火台があり、手ぶらで立ち寄り、火を囲むことができる。目の前を流れる川を見ながら、ホットワイン片手にベーコンをあぶり、薪がはじける音に耳を傾ける、なんてことも。

オーナーの建部彰一さん(53)が、趣味のキャンプが高じて、2018年に市内の別の場所で店を始めた。たき火初心者の来店が多く、8割は女性。「オール電化も進んで炎を見る機会が減り、魅力にひきつけられているのではないでしょうか」

記者(37)も週末はよくたき火に出かける。同僚から「どうしたの?」となぜか心配されるが、炎を眺めているとストレスが消えていく気がするから不思議だ。

最後に注意点。たき火ができるのは、キャンプ場などの場所に限られている。直火は、芝生や地面を傷めるためほとんどが禁止で、たき火台が必須。炭や灰も放置せず、現地の廃棄方法に従うこと。強風の日は火事の原因にもなるため避けるべきだという。(石倉徹也)



(出典:朝日新聞、2020/03/07)

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