【ストレッチで柔軟性アップ】

筋肉を柔らかく

寒い季節は体が縮こまりがちになる。さらに運動から遠ざかると体が硬くなるのを感じる。今年こそは、無理せず運動を続けたい。そしてあこがれだった柔軟性も手にしたいと、ストレッチを思い立った。

訪れたのは、東京都中央区のスタジオ。柔軟トレーナーをつとめる村山巧さんの基礎のレッスンを見せてもらった。「大人でも柔らかくなります」と村山さん。

まずは、ローラータイプの器具を使う。固く丸めたバスタオルでも代用できる。ローラーの上にふくらはぎや背中、わきの下などを乗せて、順に左右に揺らしていく。痛みが出ることもあるのは、ローラーを置いた場所の筋肉が固まっているため。ストレッチによって筋肉がほぐれていくという。参加者全員で取り組んだ「ほぐし」は約30分。参加した私も体が柔らかくなり、伸ばした側の腕などが伸びやすくなっているのを感じた。これなら、始めるハードルは高くない。

全体を伸ばした後は、参加者それぞれが伸ばしたい部分で重点的に取り組む。壁に背中をつけて座ったまま足で「4の字」を作る姿勢や、立つたまま前後に大股を開く形で姿勢を保ち、後ろ側の足のももの前側を伸ばすストレッチなどが紹介された。

村山さんによると、簡単に始められる基本の部分は、ふくらはぎ、わきの下、ももの前側、そして足裏だ。はじめの3ヵ所は、ローラーなどを使って体を左右にふったり前後させたりする。足裏は、ゴルフボールを使うとよい。まんべんなく押しつけるようにボールを踏むと、足裏の筋肉が伸びるという。これらは、そのほかの柔軟性を高める運動をする際のもととなるストレツチで、これだけで体が伸びるという。

続けていくときのポイントは、@「痛い」と「気持ちいい」の間くらいでするA家でテレビを見ながら、いすに座りながらなど「ながら」でするB自分の体の変化を楽しむ、ことだという。村山さん自身、もともと体が硬かったが、趣味で始めたフィギュアスケートがきっかけで、柔軟性を高めるトレーニングを本格的に始めたという。「体の柔軟さは、続けないと元に戻っ てしまう。一日に1_ずつ伸ばしていく気持ちで取り組んでほしい」と言う。

そもそも、ストレッチなどで柔軟性を高めるとどんなメリットがあるのか。

医薬基盤・健康・栄養研究所の宮地元彦・身体活動研究部長(体育科学)によると、ストレッチは昔から、準備運動やけがの後のリハビリテーションで活用されてきた。最近は、血圧を下げる効果があることが分かってきたという。副交感神経が優位になることが要因の一つと考えられている。体と血管のそれぞれの硬さの関係を宮地さんらが調べたところ、中高年では相関 が見られ、体が硬いと血管も硬いことが分かった。

宮地さんは、ストレッチをする際に気をつける点として、どこの筋肉を伸ばしているかを意識することや、呼吸を意識的にゆっくりとすることを挙げる。

人は老化とともに、体内の弾性に関わるたんぱく質の性質が変わり、しなやかさを失ってしまう。「ストレッチはゆっくり歩くくらいの運動強度ですぐにできる。筋力トレーニングと組み合わせることで、体の変化を実感できるようになる」と話す。

国際医療福祉大学三田病院の長島正樹副部長(整形外科)は、ストレッチの効果は、関節と筋肉の二つに分けられると説明する。ストレッチで関節の可動域を広く保つことで、関節にある軟骨が加齢などに伴って減るのを少なくできれば、変形性膝関節症の予防につながる可能性があるという。また、筋肉の柔軟性を高めておくと、衝撃を吸収でき、肉離れなどの予防につな がるという。(今直也)



(出典:朝日新聞、2020/02/01)

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