【中高年の完走、夢ではない】

フルマラソンに挑戦

今年も大いに新春の日本列島を沸かせた箱根駅伝。東京マラソンをはじめ市民ランナー向けの大会も目白押しのこの季節、「自分も走ってみたい」と思い立つ人もいるだろう。でも、普段運動をしていない人がいきなりフルマラソンに挑むのは、けがのもと。無理のない練習から始めることが大切だ。

マラソンブームはなお続いており、笹川スポーツ財団(東京)の2018年の推計によると、週1回以上ランニングをした人は全国で550万人。うち320万人は40代以上が占め、10年前から140万人近く増えた。雑誌ランナーズ「全日本マラソンランキング」によると、18年度の全国80大会の完走者のうち40代以上が6割を占め、中高年の完走は決して夢ではない。

「挑戦するやりがい、達成感は大きい。ただ、運動してこなかった人が何も準備しなければ靭帯やアキレス腱を痛める可能性がある。適度な量から走り始めることが大切」と、ランニング学会副会長の鍋倉賢治・筑波大教授は話す。

鍋倉さんが勧めるのは、20〜30分のジョギングから始めること。おしゃべりのできるようなゆっくりのペースを保ち、途中で歩いてもいい。これを週に2〜3回取り組み、まず1ヵ月続ければ、一定程度の脚力がつくという。慣れてくれば、週3回で計2時間をめどに走る。1回が40〜50分だ。

これを3ヵ月続けることが最初の目標。そして「速度に関係なく、1時間通して走れるようになればフルマラソンが見えてくる」。無理せず走り続けられる体力とペース感覚の習得が、一つの目安になるという。「『フルマラソンを走りたい』と決意した人は必ず達成している。1年のトレーニングで完走した70歳もいた」と話す。

とはいえ、続けるのは根気が要る。「1年先くらいをめどに、出湯をめざす大会を決める。申し込んでしまうのも手。フルマラソンでなくとも、ハーフや10`の部で出ることが決まれは励みになる」と鍋倉さん。また、家族や友人、地元のランニングクラブなどで一緒に走る仲間を見つける。脚力やペースが同じ水準であることがポイントで、レベルが違うとペースが合わず、つまらなく感じてしまうからだ。

シューズとウェアを最初に買う「初期投資」をしてしまうのも、続ける動機づけになる。どんな種類を選べば良いのか。

1千点以上のシューズをそろえる「スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店」の稲石幸司店長(47)は「フルマラソンでは距離30`を超えると、ひざの痛みとの闘いになる。体の負担が少ないタイプを勧めたい」と話す。

日本記録保持者の大迫傑選手らが謖く人気の厚底タイプが、初心者にもお勧めという。靴底がクッションの役割を果たし、地面を蹴ったときの衝撃を吸収。また、つま先とかかとが反り返ったようなタイプも登場し、踏み出すとゆりかごのように体を前進させる。中敷きを入れれば、衝撃の吸収効果は一層高くなるという。

ウェアでは、伸びにくい繊維をひざ付近に縫い付け、靭帯を保護するテーピング機能を持たせたタイツがある。冬場も薄いウインドブレーカーに中はTシャツで可。ネックウォーマーと帽子で保温する。

1回フルマラソンを走ると3千`カロリーを消費するとされ、道中の栄養補給も欠かせない。走るエネルギーとなる糖分や、筋肉の回復に効果的なアミノ酸を含んだゼリーなどを準備し、1時間または10`おきに摂取すると効果的という。

「シューズやウェアを選ばず長距離を走ると、体が相当ダメージを受けて翌日に動けなくなる恐れがある。店員と相談して、予算や自分の体に合った用具を見つけてほしい」と稲石さんは話す。(桑原紀彦)


(出典:朝日新聞、2020/01/11)

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