【体を温め、冬をを乗り切ろう】

温活

寒い季節になり、手足がいつも冷たい──。こんな悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。体を温めて、冬を元気に乗り切るコツを知りましょう。

「冷えは、ほっておくと血液の温度が下かって流れが滞り、酸素や栄養素が届かなくなり、必要なものがつくれなくなります。あらゆる病気のもとになるんです」

愛用しているという携帯湯たんぽを太ももの上に置きながら話してくれたのは、「冷え」に関する著書も多い東京有明医療大学の川嶋朗教授。そもそも、「冷え」とはどういう状態なのか。川嶋さんは「平熱が低い人だけでなく、高めでも、寒さや冷たさを苦痛に感じている状態を『冷え』や『冷え症』と考えています」と説明する。

体温が上がれば体調は変わる、と川嶋さんは断言する。不眠で悩む人が、湯たんぽで体を温めたらその日から寝られたり、不妊症の人が妊娠したり、という例もあるという。

「体を温める『温活』は難しくないし、お金もかからない」という川嶋さんに、対策を教えてもらった。

まずは、冷たい飲み物や食べ物を避け、体温より高い温度のものを取るようにする。それでも変わらなければ、食材にこだわる。そして、よくかむこと。「かむことで内臓脂肪が燃えて体温が上がります」

洋服は、下半身を中心に温める。心臓から遠く、地面に近いところが冷えやすいためだ。室内が暑すぎて汗をかくと冷えにつながるので、暖房の設定温度は低めにし、衣服で調節する。締め付けがきついものは避ける。川嶋さんは腹巻きも活用している。「バカボンのパパや『男はつらいよ』の寅さんスタイルが良いんです」

お風呂は、ぬるめでゆっくり。ただ、日本の住宅は断熱が不十分で寒い場合も多いので、洗い場や脱衣場をあたためてから入る。入浴剤は炭酸系がおすすめ。

そして、大事なのは自分で自分の体を温められるよう、筋肉をつけること。駅の階段は「無料で天然のジム」。エスカレーターを使わず歩く。川嶋さんは、常につま先立ちになるような傾斜がある靴を履き、普段から鍛えているという。「今の冷えは、冷蔵庫やエアコン、乗り物など文明がつくつている。少し自分に負荷をかけたほうが元気で長生きできますよ」

さらに、国際中医薬膳師で日本中医食養学会の鳳寛子理事長に、体を温められる食事についても聞いた。

薬膳では食材は「四性五味」で分類される。熱、温、涼、寒の四性と、酸、苦、甘、辛、咸(塩辛さ)の五味で、たとえばネギは体を温める「温性」で肺に作用する「辛味」。寒かったり風邪を引いたりした時に良いとされるのは、このような背景がある。

肉類はすべて体を温めるが、「ラム(羊肉)がダントツです」と鳳さん。ニュージーランドでは、代謝を上げてダイエットするためにラム肉を食べる人もいるという。体のポカポカを持続させるには、肉桂(にっき)が良い。シナモン粉より、中華食材店などで「肉桂」「桂皮」として売られている樹皮状のものを煮出して飲むのが効果的だ。

ただ、鳳さんは「冬には温性のものを食べたほうが良いというのは間違いではないけれど、そればかりではない」と話す。

薬膳の基本になっている中医学(中国伝統医学)の世界では人間の体は肝、心、脾、肺、腎の五つに分けられる。季節も五つに分かれ、それぞれの季節に負担がかかりやすい臓器があるとされている。冬は「腎」が弱まりやすく、冷えにつながる。腎を養うのは「咸」の食材。昆布などの海藻類、エビやホタテなどの海産物、黒豆や黒ごま、山芋などが良いという。(山本奈朱香)


(出典:朝日新聞、2019/11/30)

戻る