【登山と街歩きの魅力を合体】

韓国発祥「オルレ」

秋は散策の季節。ハイキングと街歩きの良さを足し合わせた韓国発祥のトレッキング「オルレ」を楽しめる場所が国内にも増えてきた。21コースが認定されている九州や3コースある宮城県のほか、本場・済州島で楽しむ人もいる。

10月27日、福岡県宗像市沖に浮かぶ大島で開かれた「オルレフェア」に記者も参加した。九州各県のほか神奈川県からも駆けつけた子どもから年配まで、参加者は約250人。「カンセ」と呼ばれる馬の形の道しるべや、リボンなどで示されたコースに沿って山野に分け入っていく。

宗像・大島コースは約11`。距離は標準的だが、序盤に展望台まで約200bの標高差があり「中〜上級」だ。汗をかきながら約30分で登りきると、眼下に玄界灘の絶景が広がり、遠く福岡市街も見渡せた。

コース沿いには世界文化遺産の宗像大社・中津宮(なかつみや)や沖津宮遥拝(おきつみやようはい)所があり、参拝する参加者も。地元の人たちによる特産「塩サイダー」や海藻スープのもてなしも受け、5時間で多くの参加者が完歩した。福岡県柳川市、西田由美子さん(61)は「おもてなしもいつも楽しみ。気持ちよかった」。孫の小学1年生、釘本龍和君(7)は「ちょつと足が痛いかな」。

オルレは済州島の方言で「大通りから家に通じる狭い路地」という意味だ。済州オルレ日本支社によると、ソウルの報道機関幹部だった女性がスペインーサンティアゴ巡礼で心を癒やされた体験をもとに、「ふるさとの済州にもゆっくり歩いて楽しめる道を」と2007年に手作りで整備を始めた。現在は26コースあり、日本人も含めて年間約100万人が楽しんでいる。

韓国人客に九州の風土を楽しんでもらおうと12年に九州オルレがスタートした。「できる限り未舗装の自然の道」「スタートとゴール地点は公共交通機関が利用可能」などの要件がある。済州オルレと提携する九州観光推進機構によると、昨年3月までの来訪者は韓国人の約21万人に対し、日本人も約17万人に上る。

人気が出た理由を、機構は「登山より気軽に楽しめ、街歩きや散策より運動になるから」と分析する。九州のコースは9〜14`を数時間で歩ける。ゴール後の入浴を目当てに佐賀県の嬉野温泉や武雄温泉のコースを訪れる人や、海鮮丼を楽しみに沿岸コースを歩く大もいる。コースは開放され、日中はいつでも歩けるが、地元のもてなしを楽しめるオルレフェアの人気も高い。

福岡県八女市のコースでは、地元のガイドらがクリスマスなどに開く独自イベントも人気だ。特産「八女茶」の広大な茶畑や国指定史跡の古墳群が楽しめる初級者向けのコースを、茶娘に扮したりハロウィーンの仮装をしたりしたガイドらと歩く。

九州や済州の取り組みを参考に昨年、宮城県でもオルレが始まった。「気仙沼・唐桑」「奥松島」「大崎・鳴子温泉」の3コースがある。 

  ¨ 九州の全コースを4度制覇し、宮城オルレも歩いた長崎県南島原市の楠田真典さん(46)は「時間制限もなく、自分のペースで歩ける。コースを逆から歩いたり、途中で辞めたりできる自由さも魅力」と話す。

経済産業省のヘルスツーリズム認証制度に携わるNPO法人「熊野で健康ラボ」の木下藤寿・代表理事(56)が済州島で調べたところ、2ヵ月間で体重や血圧の減少、ストレス軽減効果がみられたという。

九州観光推進機構によると、靴は、足首を適度に保護し、歩きやすさも兼ねる「ミドルカット」がおすすめだ。行程が長いのでトレッキング用の雨具も推奨する。

路地裏や民家の庭先を歩く区間も多い。無断で敷地に入ったり、民家を撮影したりしないことなどマナーにも気を付けたい。(竹野内崇宏)


(出典:朝日新聞、2019/11/09)

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