【40度に10分 入浴効果】

お風呂を楽しむ

温かいお風呂が恋しい季節となりました。何げない入浴も、ポイントを押さえると、より効果的に、安全に、楽しめます。

「入浴は、手軽で、優れた健康法です。積極的に、意識して入ってみてはいかがですか」

そう話すのは、東京都市大学の早坂信哉教授。「最高の入浴法」(大和書房)などの著書があり、温泉療法専門医と呼ばれるお風呂のスペシャリストだ。

早坂教授によれば、お風呂の代表的な効果が「温熱作用」という。体が温まると血管が広かって血液の流れがよくなる。すると、酸素や栄養分などが行き渡り、老廃物も回収されやすくなる。「温めると、慢性的な痛みの原因となる神経の敏感さが和らぐ効果もあります」と早坂教授は言う。

ほかにも、水圧によって締め付けられることで血流が改善する「静水圧作用」、お風呂の中で浮く関節や筋肉の緊張が緩む「浮力作用」などが期待できるという。

こうした作用が総合的に働くことで、介護が必要になるリスクを減らす可能性もあるという。

早坂教授らの研究グループが、要介護認定を受けていない高齢者1万4千人弱を3年間にわたって追跡調査したところ、週7回以上湯船で入浴するグループは、週2回以下のグループに比べて3割程度、新たに要介護認定を受けるリスクが減ったという。「睡眠の質が上がる。体の痛みが和らぎ、疲労も回復することで活動的になる。お風呂に入ることで得られる、こうした総合的な好循環が影響したと考えています」

ただ、気に留めて置くべきこともある。「これからの季節は要注意です。11月から3月は、お風呂の事故が多い」と、「高齢者入浴アドバイザー協会」(東京都)代表理事の鈴木知明さん(58)は呼びかける。

温泉好き。ただ、お風呂に関する民間の資格取得を続けるうちに、入浴をめぐる事故が多発している現状にショックを受けた。勤めていた会社を早期退職し、高齢者に安全な入浴方法を伝える資格「高齢者入浴アドバイザ上を3年前に作った。介護の現場で働く人など、全国で約800人が資格を取得したという。

厚生労働省の研究班が推計したところ、入浴に関連する事故で年間約1万9千人が亡くなっているという。リビングなどとお風呂場との温度差で、血圧が大きく変わる「ヒートショック」によって引き起こされる脳卒中や心筋梗塞が原因とされている。ほかにも、熱中症やアルコールによる影響など、原因についてはさまざま指摘がある。

シニアがお風呂に入る際に特に注意すべきことは? 鈴木さんは、「気持ちいいからと浴槽の中で寝ないように」と話す。場合によっては溺死につながるおそれもあるから、という。もう一つ。一気に全身でつからず、はじめの3分は39度前後の「ぬる湯で半身浴」をする入浴法を勧める。心臓や肺への負担を避けるためという。

さて、効果的なお風呂の入り方とはどのようなものだろうか。

早坂教授によれば、「40度のお風呂に10分」が目安という。体を温める必要があるため、ぬるすぎてはいけない。一方、42度だと体へのダメージも大きい。交感神経が刺激されることで、活動的になり、睡眠の妨げにもなりかねない。適度に体を温めるのが「40度に10分」というわけだ。

水分補給も忘れずに。入浴前後でペットボトルー本分(500いリットル)程度の水分摂取が望ましいという。あなどってはいけないのが「保湿」。お風呂で潤ったお肌は10分程度で急激に乾燥する。すぐにクリームなどで保湿することが大切という。

秋の夜。湯あみはいかが。(高喬建欠鄒)



(出典:朝日新聞、2019/10/26)

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