【プールを歩いて筋力アップ】

水中ウォーキング

川崎市宮前区の男性(75)は週3回、プールに通っている。毎回、じっくりと1時間以上かけて水中を歩く。「腰痛があるので陸上では運動しづらいが、プールなら無理なくできる。短時間で適度に疲れるので、やりがいがある」と熱心だ。

ここは水中運動特化型施設「ドゥ・カワサキ」の温水プール。看護師や健康運動指導士、柔道整復師などの資格を持つスタッフが一緒にプールに入り、個別指導もしてくれる。

リハビリ目的の利用者も多い。半身不随だった60代の男性が水中ウォーキングを続け、歩行機能を回復していった様子を記録したビデオを、代表の松本弘志さんが見せてくれた。半年程度で効果が見られたという。「水中なら転倒するリスクが低いし、普段と異なる状態での運動が脳へのよい刺激になるようだ」と、松本さんは効用の広さを説明する。

プールで歩行することには、どんな利点があるのか。20年以上にわたって水中運動の研究を続けてきた国士舘大の須藤明治教授は、ポイントを4点挙げる。浮力、水圧、温度、抵抗の四つの効果だ。

水に入ると、浮力で体重が軽くなる。ひざや股関節が悪いと陸上での運動は難しいが、水の中なら楽だ。「重力に抗する筋肉の大腿二頭筋や大殿筋などに負担をかけずに、歩行のための前脛骨筋や大腿直筋などを鍛えられる」と須藤教授。水の抵抗が加わり、短時間でも多くの運動量になる。

水圧の効果も大きい。水深1bで1平方び当たりIdもの圧力を受ける。この圧力が適度に血管を圧迫し、静脈の血液が心臓へ戻るのを助けてくれる。「心臓の負担が減るので心拍が上がりにくく、より多くの運動ができます」

さらに水温の効果も加わる。プールの温度は体温よりも低いため、身体は体温を保とうとして、より多くのエネルギーを消費するわけだ。つまり水中ウォーキングにはダイエット効果もある。

いろいろと魅力的な水中ウォーキング。では、どのように歩けば良いだろうか。さまざまな方法があるが、まずは基本の三つを押さえたい。「前進」「横歩き」「後ろジャンプ」だ。

前歩きのポイントは、前かがみにならないように視線を前方に向け、背筋を真っすぐに伸ばしながら歩くこと。最初はバランスを取るために手を横に広げ、小さな歩幅で少しずつすり足で進むとよい。倒れないよう踏ん張ることで、普段はあまり使わない筋肉を鍛えられる。慣れてくれば高くひざを上げ、手を前に出して早歩きにする。

横歩きは、おなかとお尻に力を入れながら進むのがこつだ。股関節の筋肉を重点的に鍛えられる。後ろジャンプなら、太ももの後ろの筋肉を鍛えられる。「腰を痛めている人にも効果的」と須藤教授。エビのように跳ねながら少しずつ進むとよい。

1回の水中ウォーキングで、この三つを好きな順序で組み合わせ、それぞれ25mプールを1往復する。これを1セットとして、休息を挾みながら20分程度をかける。1回に2セットを基本にすればよい。

これらの運動は、浮力のおかけで腰やひざの負担が少ない分、それらの筋肉を十分に鍛えられずに物足りなく感じるかも知れない。だが、須藤教授は「普段使っている腰やひざの筋肉を休ませながら運動することで、ほかの筋肉をより効率よく鍛えられる」という。健康な人ならプールに入る前に陸上での運動もプラスすれば、さらに効果的だ。その後のプールでの運動が、疲れた筋肉をクールダウンする役目も果たす。

注意したいのが水分補給。水の中でも汗はかくが、気づきにくい。プールから出たら必ずコップ1〜2杯の水を飲もう。(伊藤隆太郎)



(出典:朝日新聞、2019/10/19)

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