【味覚の秋の健康食品】



果物がおいしい季節。ぶどぅや梨、りんごなど多くの果物が旬を迎える。その中でも古くから日本で親しまれてきたのは柿。奈良時代には食べられていたらしい。

農林水産省がまとめた主な果物の収穫量(2017年)を見ると、柿は、みかん約74万1千トン、りんご約73万5千トン、日本梨約24万5千トンに次ぐ4位で約22万5千トン。ぶどうや桃よりも多い。

柿には甘柿と渋柿がある。成熟期の渋柿は渋みのもととなる水溶性のタンニンを多く含むが、甘柿はほとんど含まない。農研機構果樹茶業研究部門の佐藤明彦ブドウ・カキ育種ユニット長によると、甘柿はタンニンを蓄積する細胞が途中で成長を止めるため、成熟すると渋みを感じなくなる。渋柿もアルコールや二酸化炭素で渋抜き(夕ンニンの不溶化)すると甘くなる。

昔から食べられてきたので各地に多くの品種があるが、よく知られるのは、甘柿の富有や次郎、渋柿の平核無(ひらたねなし)や刀根早生(とねわせ)といったところだろう。品種づくりが仕事の佐藤さんたちは「今は大きくておいしく、生産性の高い甘柿の育種が目標」と話す。

タンニンは、さまざまな生理活性作用が注目されているポリフェノールの一種だ。近畿大農学部の米谷俊(こめたにたかし)教授(栄養機能学)らのラットを使った研究では、柿から抽出 したタンニンには消化酵素の働きを妨げて食後の血糖値上昇を抑える作用があった。ヒトでも同様に血糖値の上昇を抑制する働きを確認しており、「血糖値の急激な上昇を抑えるために、柿のタンニンをうまく使える」と米谷さんは考えている。渋抜きをしてタンニンが不溶化していても、作用に変わりはないそうだ。もちろん糖尿病などの病気を抱える人は、主治医と相談をするのが望ましい。

農研機構食品研究部門の庄司俊彦・食品機能評価ユニット長は、柿を食べれば「ポリフェノールに加えて、カロチノイドも併せてとれる。こちらは脂溶性なので体に残りやすい。習慣的に食べれば良い効果が期待できる」と指摘する。カリウムやビタミンCも果物の中ではかなり豊富だ。

「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるのは、秋が過ごしやすい季節であることとともに、柿が魅力的な健康食品だという証しかもしれない。「エネルギーが豊かで、その他の栄養分も豊富。夏の暑さで弱った体には点滴みたいなもので、プラスの効果が大きいという意味では」というのが米谷さんの見立てだ。

そんな柿は皮をむいて、そのまま生で食べるのが基本。日本園芸農業協同組合連合会の丸岡秀一・業務部次長兼落葉果樹課長は「日を追って出回る品種も変わるし、一方で産地間のリレーによって同じ品種を長く楽しむこともできる」と話す。そして「富有はカリガリ、コリコリだし(太秋(たいしゅう)はシャリシャリしていて、まるで梨。渋柿はしっとり、ねっとり。いろんな食感を楽しめる)とも。熟しすぎてどろどろになると食べにくいが、冷凍してシャーベットのように食べるのも一つのアイデアだ。

一方、昔ながらの干し柿には市田柿や三社柿など、各地のご当地品種がよく使われる。ドライフルーツ好きの海外からの観光客にも人気がある。水分が抜けた分、食物繊維をたっぶり取れる点も魅力だ。

明治期に活躍した俳人の正岡子規は、柿好きだったことを随筆の中に書いている。ならば「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の名句を残した人だというのもうなずける。この旬にちなみ、子規が奈良を旅した10月26日は「柿の日」となった。最近は若い人たちにもっと柿を食べてもらおうと、10月末のハロウィーンに向けた商戦で、「カボチャと同じ色でかわいい」とハロウィーン柿が各地の果物売り塒をにぎわすようになってきた。(米山正寛)


(出典:朝日新聞、2019/10/05)

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