【今こそ 筋肉を鍛えて強く】

シニア世代の筋トレ

「テレビのリモコンを取るために立ち上がるのが面倒」「一つ上の階でもエレベーターで移動」。運動せずにいると、体を動かすことが億劫になりがちだ。そんな時は、筋トレの出番かもしれない。

「はい、いきましょう!」「安全に、ゆっくり」。今月中旬、東急スポーツオアシスが開く60歳以上専用クラスでインストラクターが呼びかけると、60〜80代の会員5人が、マシンで太ももや胸回りの筋肉を鍛え始めた。会員の千野誠さん(67)は、退職後に入会。「体力を維持できていると感じる」と話す。

シニア専用クラスは2006年に開設。時間帯ごとに太極拳をしたり、マシンを使ったりして、転倒予防や筋力向上を目的としたメニューに取り組む。定年を契機に、体力づくりのために通うようになった人も多いという。シニア専用クラスは13店舗に拡大した。

なぜ、シニア世代に筋トレなのか。

「シニアになっても、筋肉は強くできる。筋トレをすれば、『好循環』が生まれる」。「定年筋トレ」(ワニブックスPLUS新書)の共著があり、スポーツ医学が専門の森谷敏夫・京都産業大学教授はそう解説する。

森谷教授によると、筋肉は30歳を過ぎた頃から年約1%のペースで減っていく。筋肉が減れば、基礎代謝が落ちてエネルギーを使う量も減少し、脂肪がたまって肥満につながりやすくなる。筋肉がやせ細れば、介護が必要な状態につながりやすい転倒や骨折のリスクも高まる。

一方、高齢になっても、筋肉は鍛えれば強くすることができる。「筋肉を動かすには酸素が必要。酸素を取り込もうとすることで、心臓や肺も元気な状態を維持できる。筋肉は脳からの指令で動くので、脳機能も刺激することができる」と森谷教授。これが、筋トレによる「好循環」だ。自身も60歳から空手で体を鍛え始め、68歳の今も筋肉モリモリ。取材中も、元プロテニスプレーヤーの松岡修造さんを思わせる機敏な動きと情熱的な説明の同時進行で、スクワットや空手の型を実演してくれた。

では、実際にどう鍛えればよいのだろうか。

パーソナルトレーナーで、「定年からの寝ながらできる簡単筋トレ」(宝島社新書)の著者、比嘉一雄さん(35)は「鍛えるべきは『速筋』」と話す。筋肉には、ウォーキングなどで使われる「遲筋」(ちきん)とヽ短距離走などで力を発揮する「速筋」がある。普段の生活であまり使わない速筋は衰えやすく、筋トレで鍛える。

比嘉さんがすすめるのが、器具を使わない「自重トレーニング」。自身の体重で一定の負荷をかける。大きな筋肉のある胸と足、体のバランスを保つ腹筋の3ヵ所を鍛えるのが基本という。休みも必要だ。刺激を受けた筋肉は、48〜72時間ほどかける「超回復」の過程で強くなるからだ。これらを考えると、毎日部位を変えながら、3ヵ所をそれぞれ週2回鍛えるのが理想的 だ。「毎日5分で十分」と比嘉さん。時間が取れない場合は、1日にまとめて3ヵ所を鍛え、週2回にする方法もある。

筋トレの効果を上げるためには、食事にも気をつけたい。森谷教授によると、最低でも「体重グラム」分のたんぱく質をとる必要があるという。体重67`の森谷教授の場合、67cのたんぱく質が必要という。森谷教授は、お昼時の取材で牛乳1本と卵やハムの入ったサンドイッチで20c超を摂取していた。豆類や乳製品、肉類とバランスよく食べることが大切という。「筋肉は24時間『成長』する。朝食を抜くと、たんぱく質不足になりがち」と指摘する。

記者も筋トレで、しっかり筋肉痛に。やはり、筋肉は裏切らない。(高橋健次郎)


(出典:朝日新聞、2019/05/25)

戻る