【夏に向けて汗腺トレーニング】

大型連休も終わり、汗ばむ季節がやってきた。辷の時期、暑い夏への備えとして専門家が勧めるのが、いい汗をかくための汗腺トレー・ニング。じつはいい汗はにおいがほとんどしない。汗腺を鍛えることかにおい対策にも熱中症の予防にもなるという。

汗や体臭を専門とする五味クリニック(東京都新宿区)の五味常明院長によると、いい汗とは「限りなく水に近い汗」。小粒でサラサラ。無味無臭で乾きやすい。

もともと人が汗をかくのは体温調節のため。蒸発する汗が皮膚の熱を奪い、体温を下げる。100_リットルの汗で体重70`のひとは体温を1度下げることができる。夏場に真価を発揮する冷却装置だ。

「しかし、現代人の汗はしょっぱくて、べとべとしがち。大粒で流れ落ちてしまう無駄汗が多い」と五味さんはいう。

なぜか。汗の素材は血液の液体成分である血漿。これを汗腺が毛細血管から取り込み、皮膚に送りだす。ふだんから汗をかく生活をしていると、血漿中の塩分やミネラルは途中で血液に再吸収され、体はほぼ水分だけを出すようになる。

ところが汗をあまりかかずにいると汗腺機能が衰え、塩分やミネラルが再吸収されないまま汗として出てしまう。これが悪い汗。乾燥しづらく、流れ落ちた分、余計に汗をかかないといけない。汗にまじるアンモニアや乳酸が汗臭さのもとにもなる。

悪い汗をいい汗に変えるために五味さんが勧めるのは入浴トレーニングだ。

まず43〜44度ほどの熱めのお湯をはり、両腕のひじから先、両足のひざから下を10〜15分ほど温める。最も衰えやすい手足の汗腺を刺激するためで、5〜10分ほどで全身から汗が出てくるという。皮膚が弱い人や温度感覚が衰えている年配の人は、ややぬるめの40〜41度のお湯がいい。

この手足高温浴のあとは、少し水を足した37〜38度ほどのぬるめのお湯で半身浴。体をリラックスさせる。「これを毎日続けると2〜3週間で、いい汗がかけるようになる」という。

いい汗は熱中症予防にもなる。日本生気象学会や環境省はインターバル速歩を紹介している。3分間の早歩きをし、次の3分はゆっくり歩く。夏前の5〜6月にこれを一日に5回(30分)以上。中高年や体力のない人でもでき、血液や汗の量を増やし、体温調整能力の向上が期待できる。

年齢による発汗機能の変化などを研究する大阪国際大学の井上芳光教授によると、汗をかく能力は50〜60代から落ち始める。衰えは足や手から始まり背中や胸へと広がっていく。衰え方は、もともとの発汗能力の高い男性のほうが大きく、やがて男女の差がなくなってくる。「よく『年をとって、かく汗が増えた』という男性がいますが、足から汗をかけなくなった分、頭の汗が増えているだけです」

汗をかく能力は個人差が大きいが「筋肉と同様、基本は60歳からでも鍛え直せる。自分にあう有酸素運動に取り組めば、いい汗をかける体にできる」と井上さん。「70代のマラソン愛好者で、陸上部所属の若者並みの発汗能力を持つ人もいます」

かきすぎた汗を拭くときは肌に湿り気を残すようにする。ぬれタオルを使えば、塩分などもぬぐい取れると五味さん。汗腺の穴をふさぐタイプの制汗剤は、わきの下や足裏など、体温調節に影響しない場所だけで使うようアドバイスする。

シニアのなかには汗腺機能が衰えたまま回復せず、汗をかけなくなった人もいる。「手足高温浴で汗が出ないひとは、暑さに弱い体質だと自覚してほしい」と五味さん。「エアコンでの部屋の温度管理に気をくばり、外出の際は保冷剤を持ち歩くなど、いつでも体を冷やせるようにしておくことが必要」という。(田中郁也)



(出典:朝日新聞、2019/05/11)

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